業務日誌
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2004年10月1日(金) 悲惨な結末
昨日は失礼しました。では悲惨な結末のつづきです。

旦那さんが亡くなって葬儀がありました。兄弟の仲が悪かったり、疎遠になっていたりしていたようで、この葬儀に出席しない兄弟や甥姪もいたようです。(子供がいないと兄弟や甥姪が相続人になる事を知らない人もいますから、相続人だから必ず葬儀に出席するとは限りません。)

葬儀が終わって、いよいよ土地建物を奥さんの名義に変更しようとしたところ、司法書士に葬式にもこなかった兄弟や甥姪も夫の相続人だと聞かされます。遺産分割協議書に実印を押してもらわなければならないようです。この相続人である兄弟や甥姪が金銭的に非常に苦しい状況でなければ、すぐに押印してもらえたかもしれません。

そこで奥さんは、恐る恐るこれらの相続人に連絡してみました。すると、「え〜、私が相続人?それで財産はどれくらいあるの?私の取り分は?」とお悔やみの言葉もなく、次々と質問されました。

たまたま住んでいた所が都心の一等地だったため、不動産の評価は1億円でした。兄弟の取り分はその4分の1です。計算の上では、生きてる兄弟3人に、それぞれ500万円、4人の甥姪に250万円ずつ、合計2500万円渡さなければなりません。もちろんめぼしい財産は不動産のみです。当然2500万円の現金を用意する事ができません。

結局奥さんは、旦那さんとずっと住んでいた家を泣く泣く手放し、葬儀に来なかった人達に2500万円渡しました。お金に困っていた兄弟達は大喜びです。

兄弟姉妹には遺留分(遺言しても、相続人に最低残しておかなければならない部分)がありません。旦那さんが「全財産を妻に相続させる。」と遺言があれば、こんな薄情な兄弟達には1円もあげなくて済んだのです。

奥さんの事を考えるなら、遺言を作成すべきですが、あえて旦那は遺言を作成しなかったのかもしれません(笑)。今となっては確認のしようがありません。死人に口なしです。
2004年10月4日(月) 遺言がなくて困まってしまう例 その2
前回に続いて、遺言を作成しておくべき典型パターンを紹介します。2回目の今日は「遺言者に内縁の妻(または夫)がいる場合」です。
内縁とは、ほとんど夫婦同然の間柄ではあるが、何らかの理由で婚姻届を出していない(出せない)、つまり法律上は夫婦でない状態のことです。

具体例で紹介します。山田太郎さん(仮名)には、もう10年以上別居している奥さんとその奥さんの間の子供がいます。山田さんは、過去の浮気が奥さんにばれてしまって別居することになったそうです。幸いなことに山田さんには、かなりの収入があり、毎月決まった額を別居中の奥さんに仕送りしています。

別居後、数年経ってから、何かと身の回りの世話をしてくれる女性と知り合い、今では夫婦同然の生活をしています。奥さんとは、度々離婚しようとしたそうなのですが、子供がまだ成人していないので、奥さんはそれまでは離婚に応じてくれないそうです。山田さんも未成年の子供のことは気になるらしく、奥さんとの離婚、同居している女性との結婚は「子供が成人するまでは。」とあきらめていました。

ところが、山田さんが先日突然倒れてしまいました。幸い大事には至らなかったようですが、将来に不安を感じるようになってしまいました。当然このままでは内縁関係にある女性に何も遺産を残せません。子供のことも気がかりです。どうすればいいのでしょうか?

つづく。
2004年10月5日(火) 遺言がなくて困まってしまう例 その2 つづき
困った山田さんのつづき。
このまま山田さんが死んでしまうと、相続人は戸籍上の奥さんと子供です。場合によっては、病気が悪化して寝たきりになった山田さんの面倒を看る内縁関係の女性には何も残せません。そうなると、やっぱり遺言を作成するしかありません。結局山田さんは、子供の相続分はそのまま2分の1を確保しつつ、奥さんの遺留分(相続財産の4分の1)を害さない範囲で、今住んでいるマンションを女性に残すことにしました。勿論この女性と結婚できた際には、別の遺言を再作成することにしました。

でもそのマンションをあげる(遺贈する)場合、気を付けないといけないことがあります。ただ遺贈するという遺言では、死亡した後、戸籍上の奥さんと子供にマンションの名義を変更する手続に協力してもらわないといけません。具体的には奥さんと子供(未成年の場合はさらに手続が複雑になりますが、ここでは割愛します。)の印鑑証明書が必要になってきます。当然協力してくれる訳がありませんから、裁判で決着をつけることになってしまいます。それじゃあ、何のための遺言かわかりません。

こんなケースの場合には、遺言を実現してくれる人(遺言執行者)を定めた遺言を作成すればいいのです。登記手続も遺言執行者がやればいいですから、必要になる印鑑証明書も遺言執行者のものです。奥さんに妨害されることもありません。

山田さんのケースでは、単に遺言を作成するだけでなく、遺留分や遺言執行者なども考慮に入れなければいけませんでした。とりあえず、これで一安心です。
2004年10月6日(水) この時期は相続登記が多くなります。
東京はすっかり秋らしくなってきました。朝はちょっと寒いぐらいです。季節の変わり目、体調に気を付けて下さい。

私の頃にはなかったのですが、この時期司法書士試験受験生のところに、自分の点数・順位が送られてきます。受験生から数点足りなかった等の報告がありました。択一があと1問正解していれば合格です。残念残念。ギリギリで不合格だと、あまりにもガックリしてしまって、中々来年の合格に向けての気持ちの切り替えが難しいようです。受かるべき年に合格しないと、モチベーションが維持できません。つらいところですけど、この時期からしっかりやるしかありません。つらいけど頑張って!!

今日は、遺言の話はちょっとお休み。季節の変わり目のこの時期、毎年相続登記の案件が多くなります。季節の変わり目でお亡くなりになる方が多いのも一因としてありますが、お盆で親戚が集まった時に「そろそろ土地の名義を変えようか?」という話が出たからという理由が多いようです。ちょっと涼しくなった今の時期に相続登記の手続を済ませたい人が多くなるんでしょうか?相続案件が多すぎて、誰が誰だか分からなくなります。混乱気味の今日この頃です(笑)。
2004年10月7日(木) 駅に看板が設置されました。
今日はリーガルサポートの松井理事と港区の社会福祉協議会に行ってきました。今度日本財団の協力を得て、リーガルサポートが『成年後見制度と遺言』の講座を港区で開催する事になったので、その広報のご協力のお願いです。リーガルサポートの知名度のおかげか、幸いにもご協力して頂けることになりました。

話し合いがうまくいったその帰り道、松井理事より、「明日の法人後見委員会もよろしく。」と念を押されてしまいました。そう、明日は例によって法人後見委員会です。(予定では午後1時から午後8時まで。(でもたぶん10時くらいまで(泣)。))どうやら明日は仕事にならなさそうです。たぶん日誌はお休みします。

遺言の続きにしたいところですが、以前お話していた看板が今日から東京メトロ南北線麻布十番駅のホームに設置されました。
(デザインはこちら。)

写真やイラストを利用するとか色々手段はありましたが、司法書士っぽいコテコテの内容になってしまいました。麻布十番駅ご利用の際は、見てやって下さい。(やっぱりダサイですかね?)とりあえずは、半年の契約ですが1年ぐらい様子を見たいと思います。次回の更新時の参考にさせて頂きたいと思いますので、ご意見ご感想を頂ければ幸いです。
2004年10月8日(金) 例の法人後見委員会です。
今日は例の法人後見委員会です。何も金曜日の夜遅くまでやらなくてもいいと思いますけど。。。これも明日の成年後見制度のためと頑張るしかありません。代わりに3連休はゆっくりしたいと思います。
これから司法書士会館に行ってきます。短いですけどこのへんで。
2004年10月12日(火) 東京の地名
週末のテレビのニュースでやっていましたが、今回の台風の影響で、麻布十番駅は改札あたりが浸水しました。すぐに復旧したようで、あまり被害はなかったようです。私の出身地である宮崎は毎年台風が上陸しますから、ある意味台風対策は万全です。しかし東京は降雪にしても台風・水害に弱いようです。ちょっと激しい雨が降るとすぐ、浸水したニュースが流れます。

港区は23区の中でも坂が多い地域です。坂が多い反面、坂の下・谷の地域では、たびたび浸水します。例えば溜池などはたびたび被害を受けています。この水害の多い地域はだいたいその地名で分かります。住宅を購入される際の参考にして頂きたいのですが、池・沼など水を連想する文字や谷などの標高の低さを連想する文字が地名に入っていると基本的には水害に会いやすい地域です。(もちろん例外もあります。)

東京にお住まいの方ならご存知でしょうが、代表的なのが「渋谷」「四谷」です。地下鉄の駅が突然地上に出てきますから(渋谷では2階に)、いかにこの「谷」の名がついた地域の標高が低いか分かります。車や電車でこれらの地域に行っても分かりませんが、自転車で行くと、行きは楽ですけど、帰りは大変なことになります(笑)。

逆に「台」など「山」などの地名は、基本的に標高の高い地域ですし、高級住宅街になっています。(例えば白金台・麻布台など)

ちょっと内容が脱線していましました。
2004年10月13日(水) 西高理数科
シリーズで遺言をやりますと言っておきながら、だいぶ間隔が開いていますが、気分が乗らないので、今日は自分の出身高校のお話。何ら法律がらみの話はありません(笑)。

私の出身地は宮崎県宮崎市です。その宮崎市にある宮崎県立宮崎西高の理数科に通っていました。商業科・普通科というのはよくありますが、私の通っていた当時、理数科は県内に1校しかありませんでした。そのため、宮崎市内以外の生徒は、みんな下宿生活を送っていました。

理数科という名前がついていますから、理数系を極めるのが本来のあるべき姿なのでしょうが、理数科の内部に文系もありました。要は地方の単なる進学クラスです。学校の理数科に対する教育方針は、1人でも多く国立の医学部に合格させることです。その結果、理数科の生徒の進路の大半は、国立大の医学部に進みます。(そのため同窓会に集まると殆どがお医者さんです。)この方針を維持するには、かなりの受験対策が必要となります。しかし宮崎市には、大手の受験予備校はありません。そのため、学校がその予備校の代わりの役目を果たしていました。

知り合いに説明しても、中々信じてもらえないのが、理数科の時間割です。予備校の役割を果たすため、朝は7時30分から朝課外という授業が始まります。当然先生もいる普通の授業です。放課後には2時間の補習授業があります。つまり月曜から金曜までは、午前中5時間・午後4時間の1日9時間授業、土曜日は午前中5時間・午後2時間の1日7時間授業(かろうじて日曜日はお休み)の週52コマという驚異的な授業が行われていました。

こんな法律と関係ない話ですけど、長くなったのでつづく(笑)。
2004年10月14日(木) 西高理数科 つづき
法律から遠ざかりつつある業務日誌ですが、昨日のつづき。
朝7時30分から始まり、週52コマという授業。当時はこのシステムに反感を持っておりましたが、今になって考えると先生も大変だったんだろうなと思います。7時30分に授業は始まりますが、生徒は早起きに慣れてしまうのか、不思議と遅刻する生徒は少なかったような気がします。

当然理数科ですから、この52コマのカリキュラムの大部分は理数系の授業です。普通の学校ではありえない数学の2時間連続授業などがよくありました。(多い日は1日数学が4時間とかあったような気がする。)この過度な理数系偏重授業のおかげで、文系を含めた共通一次(今のセンター試験)の数学のクラス平均点は190点(200点満点)を超えます。一部の失敗した生徒を除き、全員200点取れて当たり前の状態です。勿論理数科内文系の生徒も例外ではなく、基本的に200点取れます。訓練というのは、効果として現れるもんですね。このパフォーマンス維持のため、理数科の生徒は(一応別に普通科もあった)基本的に部活動が禁止されていました。

そんな過酷な環境の中、私はこのシステムに対する反抗心からか、また或いは、こんな業務日誌を継続できる文系的な本来の私の姿(?)からか分かりませんが、進路を私立文系に定めてしまいました。(田舎の少年が単に東京に憧れ、早稲田ならモテルという噂を信じただけのような気もしますが(笑)。)

私の受験科目(英語・国語・日本史)は52コマのうちたった16コマ。(悔しかったので、今でも覚えている(笑)。)試験の直前も数Tのみならず、数Vや物理・化学の定期試験対策までやらされておりました。受験直前期の数学の授業やテストなど、大きなハンデを抱えての私立文系受験でしたが、幸いなことに第1志望の大学に合格しました。(学校の担任の先生には、ギリギリまで地方の国立の医学部に行けと言われていました(笑)。

そんな悲惨な環境でしたが、理数科の多才な同級生と通常ではありえない密な時間を青春時代に共有しましたから、今でも仲が良く、全国各地で頻繁に(年間10回以上)同窓会をやっています。ちなみに今日もその飲み会があります(笑)。
2004年10月15日(金) 港区社会福祉協議会のご協力
先日の日誌で、「日本財団の協力を得て、リーガルサポートが『成年後見制度と遺言』の講座を港区で開催する事になります。」という内容をお知らせしましたが、港区社会福祉協議会のご協力・ご好意により、区報の「広報みなと」、「季刊みなと社協」、「ボランティア情報」「おむすびコロリン」の4誌に掲載していただけるようになりました。

本来はこちらから再度出向くのが筋なのでしょうが、上記の件では、港区社会福祉協議会の担当の方に、今日わざわざうちの事務所まで来て頂きました。好意的かつ全面的なご協力、誠に感謝・感謝です。
少しでも多くの方に、この講演を見てもらいたいと思います。ご興味のあるかたは、直接私までご連絡下さい。

追伸 昨日の飲み会ではしゃぎ過ぎたのか、ちょっと体調不良です。短いですけど、今日はこのへんんで。
2004年10月18日(月) 風邪です。。。
体調不良の原因は風邪だったようです。事務所で流行っていたので危ないなあと思っていたのですが、やっぱり引いてしまいました。医者には「基礎体力つけろ。」と言われてしまいました。早めに帰って寝ます。すみません。。。
2004年10月19日(火) 自筆証書遺言について
今日は久しぶりに遺言の話。日本における遺言は3パターンあります。
『第967条 遺言は、自筆証書、公正証書又は秘密証書によつてこれをしなければならない。但し、特別の方式によることを許す場合は、この限りでない。』
原則として、この条文にある自筆証書、公正証書、秘密証書の3パターンです。条文の但書きに「特別の方式」とありますが、これは以前紹介した船舶遭難者の遺言や死亡危急者の遺言(遺言者が今にも亡くなりそうな場合)などの特種な例ですので、あまり気にしないで下さい。一応3パターンありますが、そのどれもが長所短所があります。今日はその中の自筆証書遺言について。

まずは、条文のご紹介。

『第968条 自筆証書によつて遺言をするには、遺言者が、その全文、日附及び氏名を自書し、これに印をおさなければならない。2 自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を附記して特にこれに署名し、且つ、その変更の場所に印をおさなければ、その効力がない。』

自筆証書遺言とは、読んで字のごとく遺言者本人の自筆で書かれた遺言です。この条文のとおり
@全文を自分で書くこと。(ワープロ不可。)
A日付を必ず入れる
B名前をいれる
Cはんこを押す。(実印でなく認印でも可。でも実印が望ましいですけど。)
上記の四つのルールさえ守れば完成です。

明日はこの自筆証書遺言の長所と短所。
2004年10月20日(水) 自筆証書遺言の長所短所
昨日のつづき。
自筆証書遺言の長所と短所について。
長所
特に「遺言者田中太郎は全財産を…」のような簡単な内容の遺言の場合はすぐ出来ますから、とても便利で気軽です。公正証書遺言のように、証人もいりませんから、遺言の内容が他人に知られる心配もありませんし、わざわざ公証人役場に行かなくてもOKです。当然高額な費用はかかりません。(紙とペンさえあればそれで十分です。)また相続人も遺言者の自筆ぐらい判りますから、遺言の内容さえ明確なものであれば、相続人からその遺言は無効だと主張されにくいとも言えます。

短所
他人に知られないのもいいかもしれませんが、法律をよく調べることなく、素人判断で書いてしまうとせっかくの遺言が無駄になります。968条2項にあるように、訂正は通常の方法より厳格ですから、ここを間違えるとそれで終わってしまいます。(どうしても自筆証書遺言を作成する場合は、訂正しないで再度書き直したほうが無難です。)
また他人に秘密にできる反面、他人が知らないと、せっかく自分で用意した遺言が発見されない場合もあります。また相続人によって遺言が隠匿されたり捨てられたりするかもしれません。(こんなことを相続人がやってしまうと相続できなくなります。)ですから、複数作成して、信頼できる人に預けたりしたほうがいいですね。
また家庭裁判所での検認が必要になりますから、遺言が実現されるまで時間がかかります。あと当然ですけど、自分で字が書けなくなってしまうと作成できません。(高齢で手が震えてしまう等。)

費用がかからない分、不安定な部分が多いような気がします。次回は公正証書遺言について。
2004年10月21日(木) 健康診断の結果と遺言
体調はなんとか復活しつつあります。今週末後輩の結婚式がありますので、それまでには完全復活したいところです。体調が回復に向いつつある今日、健康診断の結果が送られてきました。全体的には問題なしなのですが、やはり運動はしておいたほうが良さそうです。(やはり中性脂肪が。。。)自宅と事務所はゆっくり歩いて20分くらいなので、毎日歩けばいいんでしょうけど、日誌を継続するのと同じくらい辛いものがあります。厳しいですけど、ちょっとずつ頑張ります。

健康診断の結果は、誰でも気になるところですが、ずっと健康な人も例外ではないようです。私の知人で、健康そのもの、大のゴルフ好きがいるのですが、突然「再検査の必要あり。」との診断結果が出たようで、ガックリした声で電話がかかってきました。ぽつりと一言。「遺言作ろうかな。。。」

そんな悲壮感を漂わせる程の深刻な結果ではないと思いますが、一般の人だと、やぱり多少なりとも「死」を意識しないと遺言を作る気にはならないもんですね。私から見ると、悲壮感を漂わせた精神状態で遺言を作成するよりも、肉体的にも精神的にも健全な状態で作成したほうが「より健全な遺言」ができて良いように思えます。

P.S.
以前携帯のパケット定額の話をしましたが、定額にして初めて請求書が送られてきました。パケット定額でなければ、8万6000円のパケット代でした。危ない危ない(笑)。
2004年10月22日(金) すみませぬ。。。
今日はこれから、司法書士会港支部の役員会です。ちょっと更新無理です。すみませぬ。
2004年10月25日(月) 株券の不発行
今日は久しぶりに商法がらみのお話。また商法改正ですか。と溜息が出るような最近の改正に次ぐ改正ですが、また変わりました。取り合えず、登記に影響のある部分でご紹介します。業界関係者以外には何のことだかという内容なので、一般の方は、読み飛ばして下さい。
今月から「株式等の取引に係る決済の合理化を図るための社債等の振替に関する法律等の一部を改正する法律」が施行されました。この改正で司法書士の業務に直結しそうなのが、『株券不発行』です。すべての株式会社は、定款で株券を発行しない旨を定めることができる。(商227条1項)となりました。

株式会社があれば、その会社は株券を発行しているものだと思われている一般の方もいらっしゃると思いますが、小さな会社では、発行していないのが実情です。今回の改正で、今まで世間の多くの中小企業で、旧商法226条1項に違反していた状態が治癒されることになります。

平成16年10月1日に改正になりましたので、今月から設立する株式会社で、株券不発行が実情に合っている場合は、原始定款に「当会社は株券を発行しない」と記載するようアドバイスすることにしました。このため、株券に関する定款の記載は大きく変わることになります。改正直後なので、公証人・法務局・司法書士の現場は多少混乱したようです。

定款にこの旨を定めた場合、登記事項となります。OCRの記載例などまだ公開されておりませんが、「資本の額」の次あたりに
「株券の不発行に関する定め」当会社の株式については、株券を発行しない
と記載すれば良いようです。(東京法務局の相談結果、何社か既にこの内容で登記されているそうです。)

登記事項になりますから、うっかり忘れないで下さい(笑)。
2004年10月26日(火) 新株発行の効力発生日が変わりました。
昨日につづき、今日も改正商法の話。(一般の方は読み飛ばして下さい。)今月の1日より、新株発行の効力発生日(新株引受人が株主になる時期)が「払込期日の翌日」から「払込期日」に変更になりました。(商280ノ9条)
皆さん(司法書士・受験生です。もちろん(笑)。)そうだと思いますが、私も受験生時代「払込期日の翌日。払込期日の翌日。」と呪文のように唱えていましたが、この部分が改正されました。

今までの旧法下では、現実に金銭の支払いをしても、株主になるのはその翌日でした。旧法下では、金銭を支払っても株式の取得は同時ではありませんから、新株引受人にはリスクがあった訳です。ちょっと難しい言葉ですが、DVP(Delivery Versus Payment)決済という用語があります。DVP決済とは金銭の支払いと株式の引渡しを同時に行う決済方法のことで、この決済方法であれば、一方のみにあったリスクがなくなることになります。このために新株発行の効力発生日が現実に払込まれた払込期日に改正されたのです。一般の方には、むしろこちらのほうが馴染みやすいのではないでしょうかね。

受験生にとってビックリなこの改正ですが、受験生より当然司法書士の現場のほうが影響があります。この改正を知った時、「10月1日以降、全国の法務局でこの改正を知らずに、登記申請して失敗する先生は多いだろうなあ。」と思っていましたが、やっぱりというか、身近にも失敗した話がありました(笑)。これからの新株発行には気を付けて下さい。
2004年10月27日(水) 公正証書遺言の長所短所
ちょっと商法改正の話が続きましたが、やっと遺言の話。シリーズでお伝えすると言っておきながら、全然シリーズになってないとお叱りを受けそうですが、今日は公正証書遺言の話です。実務で遺言というと、以前ご紹介した自筆証書遺言より、この公正証書遺言のほうが断然多いです。自筆証書遺言の弱点となる部分をほとんどカバーしています。

自筆では、せっかく書いた遺言書が発見されないなどの不利益がありましたが、公正証書の場合、公証役場に遺言者が百歳になるまで保管されるので、安心です。蛇足ですが、百歳を超えても連絡すれば保管してもらえるようです。公正証書遺言では、遺言執行者(遺言を実現してくれる人、法律家が選ばれる事が殆どです。)が選任されていますから、その人に連絡してもらいます。残念ながら、私はまだ百歳を超える方とは、お付き合いしていないので連絡したことがありません(笑)。

公正証書では、内容を公証人が見てくれますから、法律に詳しくない素人の方でも安心です。自筆証書のように、訂正に失敗して無効になるということもありません。

また家庭裁判所の検認手続がいりませんから、時間手間費用がかかりません。遺言の中身に不動産がある場合、公正証書があると登記申請が楽ですから、公正証書の表紙を見ると、正直ほっとします(笑)。

いいことばかりのようですが、短所もあります。遺言の文案を法律家が練りますし、ケースによっては、遺言執行者にもなります。公証人も関与しますから、どうしても費用が高額になってしまいます。(と言っても、不利益を受けない安心料だと思えば妥当な金額だと思いますが。)

あと短所として、証人が2人以上必要という事があります。知人に頼むと内容が知れてしまいますし、身内でも推定相続人は証人になれません。でも実務では、ほとんどの場合、遺言執行者である法律家とその事務所の職員がなりますから、費用を考えなければ心配いりません。

自筆証書がいいと考えられる方もいらっしゃると思いますが、私個人的には、公正証書遺言をお薦めしたいと思います。
2004年10月28日(木) 会社法制の現代化要綱案
東京司法書士会の港・千代田・中央の3支部を第1ブロックと呼んでいます。今日この第1ブロック主催の「会社法制の現代化要綱案」についてというセミナーがあり、私は、現在東京司法書士港支部の役員をやっている関係上、早めに会場に行ってお手伝いをしなければなりません。

株式会社と有限会社の一体化、合同会社という類型の創設、最低資本金の撤廃、類似商号規制の廃止などの大きな改正について、法制審議会会社法部会長の江頭先生(東京大学法学部教授)にご説明頂くことになっています。

という訳で、司法書士会館に行ってきます。
2004年10月29日(金) 有限会社がなくなる?
月末はいろいろあってやっぱり忙しいです。普段はあまり遅い時間まで仕事はしないんですけど、(集中力がいる仕事なんで、疲れてると間違えてしまうので。)9時になってしまいました。

昨日は、「会社法制の現代化要綱案」のセミナーに出席しましたけど、「今度から商業登記をやって行くの止めようかなあ(泣)。」と思ってしまうぐらいの大改正です(笑)。せっかく懸命に対応してきた商法ですが、原型がなくなるような改正にクラクラしてます。有限会社がなくなるっていっても一般の人にはピンとこないかもしれませんね。

実務で対応していく我々も大変ですが、今まさに商法を勉強している受験生は、本当に大変でしょうね。ほとんどがリセットされてしまう今度の改正、受験やめようかなと思う人も出てくるでしょうね。色んな知識が混ざり合って正確に理解していくのが、厳しいとは思いますが、みんな条件は一緒です。「なせばなる。」頑張って行きましょう!!

ちょっと短いですけど、今日はこのくらいで。

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Akiary v.0.42