業務日誌
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2004年9月1日(水) 気になる合否
先程、第3回特別研修で私がチューターをさせてもらっていたグループの一人から電話がありました。考査自体はずいぶん前に終わりましたから、すっかり考査のこと忘れていましたけど、やっと今日の夕方考査の合格者が発表されたようです。電話の主は幸い合格したとのこと。良かった良かった。グループ全滅だったりすると、「チューターが悪いんじゃないの。」とか言われそうだったので、ちょっと安心です。他の受講者はどうだったか気になるところですけど、さすがにこちらから連絡することもできません(笑)、もしこの日誌を読まれていたら、是非ご連絡下さい。合格祝賀会やりましょう!!

さっきまで法務省のHPが混んでてアクセスできませんでしたが、やっとデータを入手しました。
今日発表された法務省の資料によると
考査受験者数(A) 3351名
認定者数(B) 2342名
認定率(B/A) 69.9%

前回、前々回と比較すると、ちょっと合格率の低いのが気になります。確率でいくと、うちのグループから1人は落ちるデータですけど、どうですかね。。。うちのグループは絶対全員受かってる!と思ってましたけど、ちょっと不安になってきました。

今回は司法書士会の有名人が多数受験されましたけど、こちらの合否も気になるところです。
2004年9月2日(木) 全国一斉無料成年後見相談会
今日は珍しく外出が多かったので疲れました。その外出先に港区役所と港区社会福祉協議会がありました。実は今月、リーガルサポートと司法書士会共催の全国一斉無料成年後見相談会があります。各単位会で日程は微妙に異なりますが、東京では下記日程で開催されます。

@北 区 会  場:北とぴあ
     日  時:9月23日(木)10時から4時
     後  援:北区・北区社会福祉協議会
A足立区 会  場:足立区男女参画プラザ(エルソフィア)
     日  時:9月11日(土)10時から4時
     共  催:足立区・足立区社会福祉協議会
B葛飾区 会  場:堀切地区センター
     日  時:9月23日(木)10時から4時
     共  催:葛飾区・社団法人東京都社会事業医療協会
C中野区 会  場:スマイルなかの    
     日  時:9月23日(木)10時から4時
     後  援:中野区・中野社会福祉協議会
D新宿区 会  場:司法書士会館  
     日  時:9月20日(月)10時から4時
     共  催:東京社会福祉士会・全国女性税理士連盟東日本支部

申込先:電話03−3353−8191
(社)成年後見センター・リーガルサポート東京支部事務局まで

そんな訳で、港区の支部担当の私としては、この内容が記載されているチラシとポスターを港区役所と港区社会福祉協議会に掲示してもらうために挨拶回りをしていました。

実は去年も同じことをしたのですが、去年と今回では待遇が違いました。去年は「社団法人成年後見センター・リーガルサポートです。」というと相手は???といった様子で、ポスターを掲示してもらうのも一苦労でしたが、今回は「リーガルサポートです。」で「ああ、はいはいはい、司法書士さんのやってるやつね。」と説明しなくても皆さんご存知でした。リーガルができて4年ですけど、日々のリーガルの皆さん(特に苦しんでいる法人後見委員会の面々−私も含めて(笑)。)のご活躍でずいぶん社会的にも認知されたなと感じました。一般の方にはまだまだ成年後見という制度の知名度は低いようですが、区の担当の方々には既にお馴染みのようです。日々の苦労が報われたかんじです。
2004年9月3日(金) 宣誓供述書
月9といえば、ご存知だと思いますが、フジテレビの月曜21時から始まるドラマです。今は「東京湾景」やってますが、10月から「ラストクリスマス」が始まります。何で急に月9の話かというと、「今度月9の撮影を近所(斜向いのマンション)でやりますから、近隣の方のご迷惑にならないように撮影しますので、よろしくお願いします。」と撮影スタッフが挨拶に来たからです。主演は月9が13年ぶり(東京ラブストリー以来)の織田裕二だそうです。ミーハーな私としては、業務そっちのけで見物してしまいそうです。(斜向いのマンションは織田裕二の住むマンションという設定らしい。)空気がうまいとはいえない港区ですが、こんな所で都会っぷりを発揮してますね。

話変わって外国会社の設立の話。いろいろな外国会社がありますけど、その多くは本店がアメリカやイギリスなどの先進国です。設立登記の添付書類に宣誓供述書(AFFIDAVIT)が必要になることがあります。アメリカやイギリスの大使館では、これらの手続は当然慣れてます。しかし、小さい国(この表現は失礼かも)の大使館では、この手続自体に不慣れなところが多いようで、いろいろと困ることがあります。

以前外国会社の設立でこのAFFIDAVITをお客に取りに行ってもらった時に、お客が「このようなことは初めてなので緊張します。」と大使に言ったところ、その大使が「私も初めてなので緊張してます。」と言われたそうです(笑)。世界は広いので、本当にいろいろありますね。
2004年9月6日(月) 印紙が買えない
どうでもいい話ですが、先週末、急に5時過ぎてから印紙が必要になりました。コンビニで販売しているところもありますが、そのほとんどが200円の印紙です。必要だったのは結構高額でしたので、コンビニには売っていません。法務局の印紙売り場も郵便局も既に閉まってます。困り果ててしまいましたが、印紙売りのおばちゃんに連絡してなんとか土曜日中に手配できました。機動力のある印紙売りのおばちゃん、本当に頼りになります。

その土曜日事務所に出ると、事務所の一帯は、例の月9の撮影隊でいっぱいでした。よくよく見ると織田裕二が自転車に乗ってうろうろしていました。事務所の前の道路までは、カメラに入っていましたが、事務所までは写ってなかったようです。残念、残念。でも当分の間、頻繁に撮影はあるようなので、運が良ければ、事務所に来られる際に見学できるかもしれません。

今週は夕方から、司法書士会関連の行事が結構多いので、日誌の更新がうまくできるかわかりません。ご了承下さい。
2004年9月7日(火) うちのグループ全員受かってました。
私がチューターをさせてもらったグループ全員が無事考査合格しました。合格率が今回低かったので、グループ内のだれかが不合格になっても不思議ではありません。全員から合格の連絡を受け、正直ホッとしました。というのも、今回の3回目の特別研修は、私自身の考査から1年を経過してます。うまく教えようとしても、当時の記憶が曖昧になっている部分もあります。また考査合格後、ご存知のように積極的に訴訟業務を行っていた訳でもない私がチューターでうまく機能したか疑問もあります。他のグループがほとんど合格して、うちのグループだけ不合格者続出となると、当然チューターの責任になってきます。研修中1度も飲みに行くこともなく、真面目に取り組んだ甲斐がありました。

新人研修と違って、特別研修は参加者の年齢・経験・合格年度がバラバラです。司法書士試験合格したばかりの経験のない若い子もいますし、もう記憶力がないと歎く開業何十年の大御所(但し、司法書士試験から何十年も経過している)もいます。そういったバラバラのレベルの参加者を画一的な研修で全てを合格させるのは非常に難しいです。合格率が7割切ったのも仕方ないかなとも思います。
でもうちのグループは全員合格なので、誰に気にすることもなく祝賀会が開けます。早速来週やることになりました(笑)。
2004年9月8日(水) 商業登記のオンライン申請
明日司法書士港支部の集まりで商業登記のオンライン申請について説明することになりました。港支部ですから、司法書士制度のIT化対応の中で「商業登記」が当然感心の高いものであるからです。この司法書士制度のIT化対応は商業登記だけに留まりません。「不動産登記」「債権譲渡」「成年後見」「民事訴訟」「督促手続」「供託」「電子公告」といった分野でも続々とオンライン化されていきます。(しかも平成16年度中)これらを今日全部説明するわけにもいかないので、とりあえず明日発表しなくてはいけない商業登記オンラインについてちょっと説明します。

過去の日誌をお読みの方であれば、登記申請が当事者出頭主義であるのはご存知だと思います。商業登記の申請は法務局に郵送ではなく、港区の会社であれば港出張所、大阪市内であれば大阪法務局に直接申請書を持参して申請しなければなりません。不動産登記であれば、大事な権利証を郵送するのは難しいでしょうし、同一物件に申請が入るとどちらの申請が先か後かという問題もありますから、当事者出頭主義であった実益はあったと思いますが、商業登記ではそこまで当事者出頭主義にこだわる実益はないように思っていました。(確かに印鑑証明書や議事録など大切といえば大切ですが、同じ会社に同日で複数の申請がある可能性はない。)この当事者出頭主義を根本から覆すのが、オンライン申請です。

長くなりそうなので、明日につづきます。
2004年9月9日(木) 商業登記のオンライン申請2
今まで法務局はコンピューター庁とブック庁のどちらかでしたが、最近新しくオンライン庁というのが出来ました。(なぜか中野出張所と市川支局。たぶんインフラ等が整備されていたと思われる。債権譲渡登記が中野出張所で取り扱っているのもこのあたりの事情か。)実際まだほとんど申請はないようですが、このオンライン庁では既にこのオンライン申請が始まっています。オンラインで申請するからには、それなりの準備が必要となります。いくつかの数のソフトをダウンロードしなくてはいけませんし、OSやブラウザのバージョン等も気にしなくてはいけません。今日の準備にと、一応資料を読んでみたのですが、内容はパソコン雑誌の記事となんら変わりません。(ご丁寧にSSLとはとかの説明がある。)なかには英語表記のみのダウンロードサイトが準備されてますから、インストールが完了するためのハードルは、パソコンが苦手の先生には高いものになってます。

そもそもオンラインで申請するためには、それなりの安全な通信が確保されてなければなりません。そのため法務省認証局自己署名証明書を取得します。また代理人が司法書士であることの証明として司法書士の電子証明書も必要になります。(日司連認証局はICカード方式、まだ法務省が対応していないため、日本認証サービス社の属性認証型の電子証明書を利用するしかない。)そして登記申請書作成支援ソフトウェアを利用して司法書士の電子署名を付けて送信することになります。

はじめての債権譲渡登記のように、とりあえずインストールしてみないと、どれだけ大変かわかりません。今からこれらの内容を説明しなければなりませんが、パソコンが苦手な先生にわかりやすく説明するのは無理っぽいです。その先生の事務所の若いスタッフに説明したほうが良さそうです(笑)。
2004年9月10日(金) 印紙台紙
やっと金曜日。飲み会が多かったのでお疲れの1週間でした。TGIFですが今日は飲まずに帰ります。

しつこくオンラインの話をするつもりもありませんが、ちょっとだけ。オンラインになると登録免許税も従来の印紙ではなく、Pay-easy(ペイジー)などを利用することになります。当然、今後全部オンライン申請になると印紙売りのおばちゃんはピンチになります(笑)。

印紙だけではなく、まだ影響を受けるものがあります。その印紙を貼る印紙台紙です。一般の方が見る機会はないと思いますが、司法書士が申請する場合、印紙を貼る台紙は普通の紙ではなくて、各司法書士会(一部の会では例外あり)で決められた台紙を使います。この台紙ただではありません。東京会の場合1枚80円。そうです、申請1件で司法書士会に80円の会費を徴収されているのです。中には印紙が不要の登録免許税が無料の登記もありますが、決まり事なので、その場合も台紙は使用します。このような形で間接的に徴収されている会費もオンラインになればなくなります。(でも直接払っている会費が値上げしそうですけど(笑)。)

今後いろいろな分野に影響が出てきそうなオンライン申請ですが、何か発見したら、また報告します。
2004年9月13日(月) ペットと司法書士
昨日はのんびりと上野動物園などに行ってきました。のんびりとと言ってもあの広大な敷地の動物を見て周るだけでクタクタになってしまいました。今日はその疲れのせいか体の重い(いつも重いという噂もある(笑)。)月曜のスタートです。

ちょっと強引ではありますが、動物にまつわるお話。我々の業務の中でも動物が登場することがあります。動物といってもキリンやライオンなどではなく、犬や猫などのペットに関する相談です。ペットに関する相談と司法書士事務所、一見関係なさそうですが、たまに相談されることがあります。その相談者のほとんどが不動産業者か大家さんで、賃貸借関係のトラブルです。

最近では「ペット可」というマンションなどありますが、まだまだ少数です。ペットが入ると臭いやツメなどでのキズが当然出来ます。その物件を次の人に貸すために予定以上のリフォーム代がかかってしまいます。できればペットは禁止にしたいのが大家の本音でしょう。大家にこっそり内緒でペットを飼ったりしているのが、ある日ばれて、大家と揉めることになります。最初はやんわりと言っていた大家さんも店子の不誠実な対応にだんだん頭に来てしまい、関係が悪化した挙句に我々に相談となります。我々が間に入って解決すればいいのですが、関係が最悪の場合、賃貸借契約の解除・建物の明渡しを求めて裁判することになります。(特別研修で散々やらされたところ。)

報酬の割には時間ばかりかかりそうなこの案件も、ほとんどが普段登記のお仕事でお世話になっている不動産業者からの紹介です。断るに断れないのが実情です。考査に受かって認定をもらった先生もこんなところで苦労してしまいます。(登記がメインで裁判に不慣れという部分もある。)でもせっかく取得した認定ですから、不満をもらさず、お互い頑張りましょう、いつかいい事ありますよ。
2004年9月14日(火) お酒の話
今日は来客が多くてちょっと疲れました。こんな疲れた日こそ飲みに行きたいのですが、明日考査の合格祝賀会をやりますので、控えたいと思います。サラリーマン時代は、平日は毎日当たり前のように飲んでいましたが、今はそれほどでもありません。だいたい週に2回ぐらいのもんです。

一応九州出身ですから、お酒が弱い方ではありません。何を飲むかというと、地元は宮崎ですから、焼酎が多いです。宮崎には、最近ブームの芋焼酎もおいしいのがいっぱいあります。宮崎の黒木本店の入手困難な「百年の孤独」や「中々」などは、もうすっかり有名ですよね。「百年の孤独」は1本13000円ぐらいしますし、お店で飲むと1杯1000円以上したりします。

最近のブームでようやく定着した焼酎ですが、東京では、ちょっと前まではおやじの飲むアルコールという存在でした。しかし地元ではメジャーな焼酎です。お店で出された熱燗の中身が平気で焼酎だったりします。わざわざ「日本酒下さい。」といっても焼酎が出て来たりします(笑)。

基本的には焼酎に限らず、なんでも飲みます。こんなお酒好きのためか、私は現在、高知県の司牡丹酒造株式会社(かなり有名)が主催する日本酒の愛好家が集う「司牡丹の会」の東京の幹事をなぜかやっています。私は高知県とは何の縁もありませんが、司牡丹の会の幹事さんと飲みに行った時に(この時はまだこの人が司牡丹の会の幹事とは知らない)、「日本酒の中では何が好き?」と聞かれ「司牡丹。」とピンポイントで答えてしまって幹事にされたという経緯があります。

10月にこの司牡丹の会が東京であります。ご興味ある方はお早めにご連絡下さい。(今ならまだ空席があるかも。)

今日の日誌は、内容が司法書士とはかけ離れてしまいましたが、同じ『司』繋がりということで(笑)。
2004年9月15日(水) 刑の執行
今日これから祝賀会です。これから楽しもうと思ってるところですが、多くの新聞やテレビで取り上げられたので、ちょっとだけ昨日のニュースのお話。

「宅間死刑囚の刑の執行」
あまりにも突然な印象を受けた方も多いと思います。現在平均すると死刑の執行は年2〜3回あります。今回のようなニュースはあまりありませんから、日本で実際に死刑の執行がなされているという事もご存知ない方もいらっしゃると思います。

死刑の執行は取り返しがつきませんから、刑の執行は十分慎重になされます。それだけの理由ではないでしょうが、通常は死刑判決確定から刑の執行まで10年はあるところです。日本には現在、執行されていない死刑囚が60人ほどいるようです。このような今までの例を考えると、宅間死刑囚も執行まで10年以上はあるところです。
ところが今回は事情が違いました。事件の残虐さや社会への影響、被害者の親族の感情や世論などを考慮に入れた結果なのでしょう。今までにないスピードで刑が執行されました。

司法書士は法務省と非常に関係の深い職業です。当然今回の事に対して、批判的な意見も述べられませんし、積極的・肯定的な意見も述べられません。このことについてどうこうというコメントは今回控えさせて頂きたいと思います。

「死刑の是非」、本来はこのテーマだけで本になりそうなくらい議論されているところですから、単純に今日の日誌でどうだとも言えません。議論されている内容も深く、容易に結論も出ません。色々な意見があります。テーマが大きい割には、自分の意見が述べにくいため、薄い内容になってしまいました。失礼しました。
2004年9月16日(木) 広告の費用対効果
打ち合わせが長引いてしまい、遅い時間になってしまいました。昨日は、合格祝賀会だったこともあり、ちょっと疲労モードです。私がお酒は弱いほうではないと数日前書きましたが、私と違って世間にはお酒の弱い人がいるようで、いろんな事があった飲み会でした(笑)。やっぱりお酒は弱いより強い方が得ですね。昨日お集まりの皆さん、懲りずにまた飲みましょうね。

話変わって、看板ネタ。ちょっと前に司法書士原田事務所の広告を駅の構内に掲示する話をしました。皆さんからあまり反応がなく心配なのですが、結局名刺代わりのつもりで出すことにしました。駅を利用する一般の人向けなので、内容をどうするか、だいぶ悩みましたが、結果として、カッコイイものではなく、こてこての司法書士事務所っぽいものになりそうです。

最終的には来週中にデザインを決定し、10月1日には完成予定です。東京メトロ南北線の麻布十番駅のエスカレーターを降りたあたりです。10月以降麻布十番駅をご利用の方は是非見ていって下さい。

広告の費用対効果。どうなることやら。
2004年9月17日(金) 遺言書を作成するタイミング
忙しい時と暇な時と最近両極端です。満遍なくちょっと忙しいが続けばいいんですけど、業界が業界なので、そう都合良くはいかないようです。

さて今日から数回に渡り、シリーズ「遺言」について連載をしたいと思います。色んなパターンをご紹介しますので、多少なりともお役にたてれば幸いです。(ずいぶん前日誌に書きましたが、業界では「遺言」は「ゆいごん」ではなく「いごん」と発音してます。そのつもりで読んでいって下さい。)

今日はその1回目、「遺言書を作成するタイミング」です。
一般の方の感覚では遺言と遺書の作成のタイミングが同じ時期のような気がします。無論遺書は死ぬ直前に作成しますが、遺言は死ぬ直前である必要はどこにもありません。「まだまだ元気だから。」なんていうのは、遺言を書かなくてよい理由になりません。もし急に元気でなくなったら、法的に有効な遺言が出来なくなる場合だってあります。ボケちゃったら遺言は無理です。判断能力が低下し始めてから、周りに言われて遺言を作成するようでは、時既に遅しです。正常な判断ができるからこそ、ちゃんとした遺言が作成できるのです。

「でも早めに作成しても、後で気が変わったらどうするんだ?」遺言はいつでも取り消せますから、心配ご無用です。遺言はあなたのためではなく、残された相続人達が争わないためです。次回以降「遺言を書かなくてはいけない人」をご紹介しますので、その人に該当される方は本気で考えたほうがいいでしょう。

私が考える「遺言書を作成するタイミング」は「年金をもらえるようになったら」です。老後・死後について改めて真剣に考えるには、いい機会だと思います。もう1度念を押しますけど、遺言を作成するのは、もうそろそろあなたが死ぬからではなく、あなたの大切な相続人等のためです。冷静な判断ができる時期を逃すと遺言が作成できなくなるかもしれません。天国で後悔しないようにね(笑)。
2004年9月21日(火) 遺言の基本1
先週末は遺言作成の最良(最後?)のタイミングについてでした。どんな人が遺言を作成すべきか?を説明する前に、遺言の基礎知識(おさらい)。
遺言をテーマには過去何度か取り上げましたが、基本の条文を解説します。

『第960条 遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、これをすることができない。』
この法律とは民法のことです。遺言の内容が実現されるのは、遺言者が死んでからです。曖昧な内容では、既に「死人に口なし」ですから、「ここの部分は本当はどういう意味なの?」と遺言者に確認のしようもありません。ですから遺言でできることも定まっていますし、厳格な方式が定まっています。(基本的には自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言です。)

民法を無視した遺言は無効になってしまいます。民法と一般的な常識と微妙にズレがあります。これでOKだろうでは、せっかくの遺言が無効です。素人判断はやめましょう。有名なズレには次のようなものがあります。
1 ワープロで作成して署名捺印すればOKっぽいですけど、これではだめです。(多く残されるパターンの自筆証書遺言の場合)
2 日付は絶対記載しないといけません。(司法書士受験生なら誰でも知ってますけど、平成○年○月吉日はだめです。)遺言はいつでも取り消せますから、後の日付の遺言かどうか判断しなくてはいけないからです。
3 夫婦の共同遺言もできません。「私(夫)が死んだら、あなた(妻)に全財産を、私(妻)が死んだら、あなた(夫)に全財産を…」では無効です。遺言はいつでも撤回できないと(取り消せないと)いけません。共同では、どちらかの気が変わっても変更ができないからです。

つづく。
2004年9月22日(水) 遺言の基本2
今週みたいにお休みが多いとうれしいですね。遺言の基礎知識をさらっとおさらいしようと思ったのですが、結構基礎部分が多く、中々本題に入れません。しばらくご辛抱を。

『第961条 満15歳に達した者は、遺言をすることができる。』
成人に達してなくても15歳で遺言作成はできます。未成年の場合、普通は親権者の同意が必要ですが、遺言には必要ありませんし、同意がなくても取り消せません。しかし実際のところ未成年で遺言する実益はあまりないように思います。でも一応この年齢でも遺言可能ということです。

『第963条 遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない。』
よく裁判で揉めるところです。当然この遺言能力については判例もたくさんあります。今回私が遺言を早めに作成したほうがよいと説明しているのも、多くはこの部分に影響が出てくるからです。早めの準備があればいいのですが、現在遺言を作成される方のタイミングの多くは高齢になってからであり、大病した後です。現実的に死に直面してからでないと遺言を作成する気にならないのでしょう。

高齢になればなるほど、判断能力は低下していきます。全て完璧な法的に完成度・技術度の高い遺言は作成も理解も難しくなります。相手に判断力があれば、理想的な遺言が作成できるのに、この高齢者ではここまでの内容は無理だなとあきらめなくてはいけない事もでてきます。医師の診断が必要となるケースも多くなります。実際大丈夫だろうと思っていても、精神科の診断結果は厳しい場合も少なくありません。私も過去に困ったことがありました。

精神科で具体的にどんな診断をするのか、そのテストの内容については後日。
2004年9月24日(金) 長谷川式簡易知能評価スケール
先日言っていた精神科の診断の多くは『長谷川式簡易知能評価スケール』というものでテストされます。下記の質問にどれだけ答えられるかで具体的な点数で痴呆の程度を判断します。業界では単に長谷川式と呼んでいるものです。

30点満点のテストになっており、20点以下で痴呆あり、16点以下で中等度の痴呆、12点以下でやや高度の痴呆、8点以下で高度の痴呆とされています。私の助言に従って、早めに遺言を作成しないと、この結果に一喜一憂する訳です。 いい点数を取ろうとして何回も練習しても中々スコアは上がりません。うまい具合には行きません。


★質問内容と点数
(1) お歳はいくつですか?
2歳までの誤差は正解・配点は、正解であれば1点
(2) 今日は何年の何月何日ですか?何曜日ですか?
年月日、曜日がそれぞれ正解で1点(合計4点)

(3) 私たちが今いるところはどこですか?
自発的に出れば2点、5秒おいて、家ですか、病院ですか、施設ですかの中から正しい選択をすれば1点

(4) これから言う3つの言葉を言ってみてください。あとでまた聞きますのでよく覚えておいてください。 
例1 @梅 A犬 B自動車を3回繰り返し、復唱させる。 
例2 @桜 A猫 B電車
3つとも答えられれば3点

(5) 100から7を順番に引いてください。
例えば、100円から7円のものを買うとお釣りはいくらですか。93円と答えられれば、93から7引くといくらになりますか。
最初の答えが不正解な場合はそこでうち切る。
93と答えられれば1点、86と答えられればもう1点

(6) これから言う数字を逆から言ってください。
6−8−2と3回言う。その後、逆に答えてもらう。2−8−6と答えられれば1点答えられなければうち切る。 0点
答えられれば、次に4−1−7−5を3回繰り返し、逆に答えていただく。
答えられれば、もう1点

(7) 先ほど覚えてもらった言葉をもう一度言ってみてください。
自発的に回答があれば各2点。もし回答がない場合は以下のヒントを与え正解であれば各1点。 @植物  A動物  B乗り物

(8) これから5つの品物を見せます。それを隠しますのでなにがあったか言ってください。
無関係な日常用品を5種類集め、高齢者に一つ一つ説明する。
目を閉じてもらい、品物を隠す。回答1個につき1点。

(9) 知っている野菜の名前をできるだけ多く言ってください。
回答された野菜の名前は書きに記入。
0〜5個は0点 6個は1点、7個は2点、8個は3点、9個は4点、10個は5点
途中でつまって約10秒待っても回答のない場合はうち切る。

あなたも身の回りの人でちょっとテストしてみて下さい。油断すると私も30点取れないかもしれません(笑)。この長谷川式で21点以上であれば、遺言作成に問題なしとなりますが、実際は微妙なケースが多いと思われます。
2004年9月27日(月) 船舶遭難者の遺言
今日は遺言からちょっと脱線します。先週末はひどい雨が降らず助かりました。というのも私にしては珍しくアウトドアな週末を送ったからです。全然趣味とは言えませんが、週末楽しんだのは海釣り。おかげでまだ全身筋肉痛です(笑)。慣れない筋肉を酷使したため、首・肩・腰に来てます。

朝6時に茅ヶ崎漁港を出発するので、前日から泊まりで行ってきました。子供の頃は宮崎市を流れる大淀川で川釣りを楽しんだりしていましたが、海釣りは今回で2回目のど素人です。一応今回の狙いは「いなだ」だったのですが、いなだは釣れませんでした。釣果はというと、ど素人の割にはかつお(40〜50センチ)3匹、めじまぐろ50センチ1匹、シイラ(50〜60センチ)3匹、数十匹のさばと満足いくものでした。

結果は満足いくものでしたが、過程は悲惨なものでした。あいにく私の釣る船の中の位置が、荒くれ船長に一番近い場所。「エサの付け方はそうじゃねーだろよー。」「リール巻き過ぎんだよ。何回言わせれば気が済むんだよ、おー。」「魚が痛んじまうだろうがよー。さっさとしな、さっさと。」「おめーなんでそんな絡まることしやがるんだよ。」などの怒声に6時間耐えなければならなかったからです。普段先生と呼ばれる司法書士になってから、他人に怒られること自体あまりないのに、6時間怒られっぱなしでした。いい勉強になりました(笑)。

海釣りの話を強引に遺言のお話にします。乗っていた船が遭難する場合でも一応遺言できます。
第979条 船舶遭難の場合において、船舶中に在つて死亡の危急に迫つた者は、証人2人以上の立会を以て口頭で遺言をすることができる。2 口がきけない者が前項の規定によつて遺言をする場合には、遺言者は、通訳人の通訳によりこれをしなければならない。3 前2項の規定に従つてした遺言は、証人が、その趣旨を筆記して、これに署名し、印を押し、かつ、証人の1人又は利害関係人から遅滞なく家庭裁判所に請求してその確認を得なければ、その効力がない。

とこんな状況でも遺言は作成できますが、3項にあるように、一緒に遭難した船に乗っていた証人2人は無事生還しないと効力がありません。実用的ではありませんが、こういう特種なケースもありますということで(笑)。
2004年9月28日(火) 明日いよいよ司法書士試験の合格発表です。
明日いよいよ司法書士試験の合格発表です。気持ちが高ぶって、夜眠れない受験生も多いのではないでしょうか?明日実際に法務局に見に行かれる方もいるでしょうし、法務省のHPで確認される方もいるでしょうが、いずれにしてもドキドキですね。私の場合は、合格発表を確認する前に、ポストに合格通知がもう配達されていました。ちょっと拍子抜けしましたが、やっぱりうれしいもんです。

今はどうか知りませんが、私の時は合格通知は普通郵便で届きました。迫力0です。そしてこの合格通知が口述試験の受験票を兼ねていました。記載内容はたぶん同じだと思いますが、『1 平成16年度司法書士試験筆記試験に合格したから通知する。 2 平成16年度司法書士試験口述試験の受験票(裏面)を送付するから、受験の際持参されたい。』みたいな文言が載っていると思います。届くといいですね!

受験生の皆さん、明日朗報お待ちしております。合格していれば、後は口述試験のみです。もう一息です。遺言関係の続きを書こうと思いましたが、月末でドタドタしているので、今日はこのへんで。
2004年9月29日(水) 遺言がなくて困まってしまう例 その1
今日は月末の大安でどこの司法書士事務所もドタバタな1日だったと思います。お疲れ様です。そんなドタバタな1日でしたが、受験生の皆さんは試験の結果はどうだったんでしょうか??合格した人は口述に向けて、落ちてた人も来年の合格に向けて頑張って行きましょう!!

さて遺言の話に戻します。今日から数回に渡って遺言を作成しておくべき典型パターンを紹介します。1回目の今日は「夫婦間に子供がいない場合」です。

ご存知のように通常相続人は、被相続人(お亡くなりになった人)の配偶者と子供です。このように子供がいれば、それまでひとつ屋根の下で生活をした人(家族の一員)が相続人となりますが、子供がいないとなると話はややこしくなります。子供がいないと、配偶者と被相続人の父母(直系尊属)が相続人です。しかしながら、ほとんどの場合は被相続人の父母は既に他界しているのが普通です。ですから子供がいないケースだと相続人は配偶者と被相続人の兄弟姉妹(既に死亡している場合は、甥姪)になります。

一般の感情(常識?)では、夫のものは妻のものであり、妻のものは夫のものと理解し、生活しているのではないでしょうか?相手が生きていればその理解である意味正しいのでしょうが、子供のいない配偶者が死亡するとその常識は通用しなくなります。

遺言がなくて困まってしまう例。
財産といえば、夫婦が住んでいる土地建物だけ。今回旦那さんがお亡くなりになりました。夫婦の間には子供はいません。残念ながら旦那さんは遺言を作成していませんでした。旦那には兄弟が5人おりましたが、そのうち2人は既に死亡しております。死亡した兄弟には子供が2人ずついます。

上記の例では奥さんと3人の兄弟・4人の甥姪が相続人です。一般的には残された奥さんが可哀想なので、兄弟や甥姪は相続放棄してくれたりします。そうなればいいのですが、世の中そんないい人ばかりじゃありません。(今まだ不況なんです。)よりによって居住用の不動産が都内の一等地にあって、相続人の一人である甥が家を購入したてで物入り、兄弟の一人はリストラにあって現在無職、他の兄弟も奥さんの両親がご病気でいろいろ医療費がかかっています。なんて状況だとどうなるでしょう?

悲惨な結末は明日。
2004年9月30日(木) すみませぬ。。。
悲惨な結末は明日と昨日書いたのですが、突然高校の同級生が事務所に遊びに来たので、早めに業務を終了します。すみません。。。

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