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司法書士法人ファルコは商業登記・会社登記・法人登記を中心とした企業法務コンサルティングに特化した専門家集団です。

ブログ

2014年06月20日

株主総会の書面決議のお話 その6

日本対ギリシャ いい感じでしたけど、おしかったですね。
ギリギリまで自宅で観戦、なんとか9時に間に合いました。

さて続き。

きっかけは、株式譲渡でした。私が関与していたX社は、元々ある上場会社(A社)の100%子会社。A社が100%所有していた株式の一部を他の上場会社(B社)に譲渡したのが事の始まり。

譲渡されるまでは、X社は、A社の100%子会社ということもあり、株主総会・取締役会の運用もそうシビアなものではありません。X社の担当者と親会社であるA社の担当者もどちらかというと「なあなあ」な感じ。

譲渡されるまでは、総会の書面決議を行う場合、提案には取締役会の決議は不要というスタンスで、さらっとA社に提案書を渡し、同意書を回収して終わりにしていました。

B社に株式が一部譲渡され、B社サイドから数名の取締役を出すという話になりました。役員変更登記があるので、私が準備したのは、当然
提案書・同意書・株主総会議事録・就任承諾書というさらっとシリーズ。

納品も終わってしばらくして、X社の担当者がB社の法務部から変な質問が来てるんですけど、どう対応すればいいかという問合せがありました。

B社の法務部からの変な質問というのが、
「319条1項の提案に関して承認された記載のある取締役会議事録」を見せて欲しいというもの。

X社の担当者が困っていたので、

「株主総会の書面決議のお話 その4」
http://shihoushoshi.main.jp/blog/archives/002837.html

でご紹介した千問や葉玉先生のブログを引用し、実務では、総会の書面決議を行う場合、提案について取締役会の決議は不要ですよと説明し、先方に伝えてもらいました。

つづく。

 

2014年06月16日

株主総会の書面決議のお話 その5

W杯日本代表の初戦残念でした。
面白い対戦カードもありますが、寝不足というより早起きするのがつらいですね。
体調に留意しながら、しっかり応援していきましょう!!

さて、前回の続き。
時が経つにつれ、書面決議が実務で採用されるケースも会社法施行当時に比べると、格段に増えました。上場会社はもちろん、
中小企業も書面決議を採用し始めました。特に人事異動の多い上場会社の100%子会社の臨時株主総会は、余程重要な議案が他にない限りは、
ほぼ書面決議が定番となりました。

役員変更登記が必要なので、当然事前に議事録等の内容をチェックするのですが、ある頃からかチェックする議事録に
「319条1項の提案に関して承認された記載のある取締役会議事録」が増えて参りました。

そういった取締役会議事録をチェックした始めの頃は、「まあ、さすが上場企業、やらんでもいいのに、手堅いな〜。」
くらいに思っていました。ところが金融・商社・メーカー等が、「319条1項の提案に関して承認された記載のある取締役会議事録」
を次々と採用。

「こりゃいくらなんでもやり過ぎでは?」

そう思い始めた頃、真相が判明しました。

つづく。

 

2014年06月13日

株主総会の書面決議のお話 その4

昨日の続きです。
会社法が施行されたばかりの頃は、今と違って探り探り実務を行っていました。会社法だけでなく、当然商業登記も探り探り。実務家向け、
特に司法書士向けの書籍もほぼ存在しない状況で、法務局によって対応が違ったり、かなり苦労した記憶があります。
株主総会や取締役会の書面決議もそういった探り探りな状況で少しずつ解決していました。

苦労した当時の実務のバイブル的な存在が「論点解説 新・会社法 千問の道標」。

総会の書面決議を行う場合に、提案内容について取締役会の決議は不要という根拠がその487頁に表として掲載されています。
株主総会決議の省略(319)の項目に298省略可能となっております。

またその千問の編著者で立法担当者でもある葉玉先生が書かれていたブログ「会社法であそぼ。」は、
当時の実務家には相当有益でありました。その「会社法であそぼ。」に総会の書面決議を行う場合に、
提案内容について取締役会の決議は不要という記載があります。

会社法であそぼ。 2006年08月04日より引用
http://blog.livedoor.jp/masami_hadama/archives/50934696.html

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Q8
先日、子会社の会計監査人の選任に関し、第319条の「株主総会の決議の省略」を利用する場合のことを質問させてもらった者です。
この問題に関し、またよくわからないことが出てきました。以下、ご質問します。
@ 第344条第1項第1号では、会計監査人の選任に関する議案を株主総会に提出する場合、監査役(会)の同意を得ることとされますが、
第319条第1項の「株主総会の決議の省略」は条文上、「提案」であり、「議案の提出」ではありません。この場合でも、この「提案」
に監査役(会)の同意は必要ですか?
A 第319条第1項の取締役とは代表取締役に限られますか?
B Aの場合、取締役からの提案は取締役会の決議(承認)を事前に受ける必要はないのでしょうか?Posted by R at
2006年08月02日 22:29

A8
@344条1項1号の議案の提出には、319条1項の提案も含まれると解されます。したがって、提案に監査役の同意が必要です。

A提案するのは、代表取締役に限られません。
B提案には、取締役会の決議は不要です。

また同様の内容について
会社法であそぼ。2006年08月05日
http://blog.livedoor.jp/masami_hadama/archives/50936940.html

 

会社法であそぼ。2007年11月23日 (金)
http://kaishahou.cocolog-nifty.com/blog/2007/11/post_4d10.html

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Q8
319条1項で取締役の提案する株主総会の目的事項は、取締役会設置会社の場合、取締役会における決定が必要なのでしょうか。
298条1項の適用はないけれども、362条4項の「その他重要な業務執行の決定」にあたるとして、必要ということでしょうか。
ご教示願います。
投稿 企業戦士 | 2007年11月16日 (金) 20時43分
A8
 319条1項の提案は、基本的には、取締役会の決議は不要です。

みんなが頼りにしていた「会社法であそぼ。」で、これだけ総会の書面決議を行う場合に、
提案内容について取締役会の決議は不要とありますから、当然これが実務のスタンダードですよね。のはずです。

しかし、問題が発生してきました。

つづく。

 

2014年06月12日

株主総会の書面決議のお話 その3

昨日のブログで「江頭338頁がスタンダード」と書きましたが、誤解を生じやすいので、
これから数日間の連載を読んでご判断頂きたいと思います。(しかし現状そういう対応をしている企業が多いのですが、その理由などは、
後日説明致します。)

さて、まず「江頭2:50」のまとめ
「江頭338頁による考え方が手続きを重くする」というのは、つまり
「取締役設置会社において取締役が取締役会の決議を経ないで提案した場合には、決議取消事由となる」ので、
株主総会書面決議を取締役の提案で行う場合には、必ず事前に提案内容について取締役会の決議が必要になるということ。

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参考までに
(株主総会の招集の決定)
第二百九十八条  取締役(前条第四項の規定により株主が株主総会を招集する場合にあっては、当該株主。
次項本文及び次条から第三百二条までにおいて同じ。)は、株主総会を招集する場合には、次に掲げる事項を定めなければならない。

一  株主総会の日時及び場所
二  株主総会の目的である事項があるときは、当該事項
三  株主総会に出席しない株主が書面によって議決権を行使することができることとするときは、その旨
四  株主総会に出席しない株主が電磁的方法によって議決権を行使することができることとするときは、その旨
五  前各号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項
4  取締役会設置会社においては、前条第四項の規定により株主が株主総会を招集するときを除き、第一項各号に掲げる事項の決定は、
取締役会の決議によらなければならない。

「江頭2:50」だと、総会を書面でさらっとやろうとしても、取締役会開催するにあたって、取締役のスケジュールの調整を行ったり、
取締役会を書面決議で行うにしても、作成準備しなかればならない書類が単純に増えたり大変です。総会書面決議の提案日と同意日の他に、
取締役会書面決議の提案日と同意日の間隔を考慮すると、機動的に動けなくなります。スケジュールも最短という感じではなくなります。

この「江頭2:50」ではなく、総会の書面決議を行う場合に、
提案内容について取締役会の決議は不要という実務家にはありがたい考え方もありまして、こちらの根拠等については、
続きにて明日以降ご説明していきます。

思ったより長い連載となりそうですが、お付き合い下さい。
ブログ更新には、厳しいシーズンですが、このネタでしばらく楽できそう(笑)。

つづく

 

2014年06月12日

昨日の補足

「スタンダードじゃないやろ!」とつっこみがありましたので、補足。

昨日の記事だけ読むと誤解を生じそうなので、シリーズ全体をお読みください。